FC2ブログ
A D M I N

2020-03

更なる続きは挫折 - 2011.12.10 Sat

発表会の話は、もっと言葉を選びつつ詳しく書こうと思っていたのですが、今日から、家の中の引っ越しの続き(6月初めに足指を骨折して以来中断していた)を何とかこなさねばならぬ事情あり、当日配布した「自己紹介及び曲目解説」の中から私の文章だけをコピーペーストして終わらせます。

______________________


 自己紹介も今回の演奏会の意図もプログラムに簡単に記しましたので、ここでは補足的内容です。
 チェルニー(1791~1857)に関する詳細は、「ピアノと向きあう」の第76~106ページをご参照ください。
 今回チェルニーの練習曲を多く取り入れましたのは、彼がリストの師匠として技巧面で大きな影響を与えたからです。
 以下は思い付くまま全くの余談を…

《リストについて》1811~1886
 今年は「リストの年」としてTVなどでも大きく取り上げられていますので詳細は割愛します。が、正しい年代を調べるために「グローヴ」(世界で最も権威ある音楽事典)を開きましたところ、「チェルニー」で引いた場合の記載と「リスト」で引いた場合の記載で、違いがあり、これは困ったことです。
 フランツ・リストは、6歳の頃から父親の弾くピアノに耳を傾けて育ち、宗教音楽に興味を示し、又育った土地柄ジプシー音楽にも囲まれていました。並外れた創造力での作品を9歳の時に聴衆の前で演奏しています。この頃に育まれた宗教心、ジプシーのキャラクター、即興性は、生涯をかけて作品にも顕著に表れています。
 1820年代初め、リストの父親は息子をチェルニーに就かせるため、ウィーンに連れて行きました。既に演奏会を開いていた当時のリストは、「型破りの支離滅裂状態」だったそうですが、無限の才能を見出したチェルニーは、彼にバッハ、ベートーヴェン、クレメンティ、フンメルの作品を徹底的に学ばせ、天賦の才を伸ばそうとしました。リスト自身はそのやり方に耐えられなかったようですが、後には自分の現在はチェルニーのお蔭である、と事あるごとに述べて、かの「超絶技巧練習曲集」をチェルニーに献呈したほどです。
 余り知られていないのですが、この「超絶技巧練習曲集」12曲の骨組みは、リストが14歳の時に既に作られ、Op.1として日本版でも出ています。ご興味を持たれる方は、是非比較なさってください。

*よく訊かれる質問のひとつ、リストの「S」番号は、フランツ・リストの最も正統的な作品表を作成したイギリスの音楽学者、ハンフリー・サール(Humphrey Searle)の頭文字によります。彼は、ウェーベルン(Anton von Webern)門下の作曲家でもあります。

《チェルニーの練習曲集について》
 チェルニー30番練習曲の正式名は「メカニズムの練習」Op.849で、サブタイトルとして「Op.299への準備として」と書かれています。チェルニーはベートーヴェンの弟子として、師匠の作品を弾くための練習曲を書き始めました。ですからそれらは可成りの技巧が求められます。当時最先端のピアノ教師でもあり、Op.299(40番練習曲)が難しすぎる生徒は勿論、優秀であっても手の小さな子供にも弾けるように、このオクターヴが用いられていない30の練習曲集が書かれたと思われます(オクターブは、第13番最後の方で、バスを押さえて和音の後打ちを弾く2箇所があるのみ)。当時のヨーロッパの子供達でも体格は良かったでしょうから、おそらく日本で言う「幼稚園児~小学校低学年」位の手の大きさを考慮した練習と思われます。しかし大人であっても、一旦悪い指・手の癖が付いてしまった場合は、自然な手の形を取り戻すために、この位狭い音程での練習は甚だ有効です。
 「メカニズム」と書かれている通り、どの指も均等な強さと弾力性、瞬発力を持つことが求められています。ただ、プログラムにも書きましたが、粒が「音楽的に」揃った演奏というものは、1音ずつに表情の違いがある筈です。弱い指がcresc.の頂点になることも頻繁にあります。
 当時の最高峰であるベートーヴェン、シューベルト、ショパン、シューマン達のピアノ曲を演奏するために必須不可欠な指のトレーニングであると同時に、そのメカニズムを如何に自己表現に使うか、という辺りに問題があります。当然Op.299も「作品」として演奏すべきであり、Op.849は、その一回り小さな作品集です。
強い指を鍛える訳ですが、美しいピアニッシモを揃えて弾くためには、別な「指の強さ」が必要です。
 ところで、この曲集に短調の曲が1曲しかないのは、子供達を練習嫌いにせぬように明るい曲を、とのチェルニーの配慮か、はたまた増2度を要する和声的短音階が子供の手には不自然との判断か…と思い巡らせます。長調ばかりの通奏は、弾き方次第では退屈極まりないことと思います。淋しさも悲しさも怒りも存在しないのですから。
 けれども、3.11からの大惨事続きの今年にとりまして、この長調ばかりの曲集は慰めや勇気づけに繋がる気もします。
 暗さは全くありません。幼い頃の想い出、日本の美しい自然、楽しい光景、躍動感…(以下は独断と偏見)
 第1番から第8番まではC-dur(ハ長調)続きで、特に自然な朗らかさ、明るさ、温かさ、又躍進が感じられます。例えば第4番は温かい心ですっぽり包んでくれます。第5番は小躍りしているが如きリズム。第9番と第10番がF-dur(ヘ長調)。第10番のテンポは速いですが、分散されたコラールを彷彿とさせます。その後は♯、♭ともに増えて行きます。第15番は活気に溢れた子供たちの遊び、第16番は勇ましさ、第17番はサンタクロースの雪車の鈴のように(私が幼い頃は)感じられました。第18番は、ベートーヴェンの「英雄」や「皇帝」と同じEs-dur(変ホ長調)。キャラクターも似ています。第19番は楽しげなワルツ、第20番は青く澄み渡った空に赤蜻蛉が飛び回っているイメージを抱きます。その後の♯系の曲は、虫の羽音、粉雪、雪解け…唯一の短調である第26番は「焦燥感」。第28番には「団結心」のようなものを感じます。

 本音を言えば、「あと2-3曲『短調の曲』があれば、どんなにか通奏し易いだろうに・・・」

《Félix Le Couppeyについて》1811~1887
 生誕200年を迎えるFélix Le Couppeyについて、本に於いてもインターネットに於いても、余りに文献が少なすぎます。「グローブ」すら、どのアルファベットで調べても載っていません。カタカナ表記は難しいところですが、「ル・クーペ」は相応しくない気がし、今回は「ル・クッペィ」と表記します。
 ル・クッペィは、1825年(14歳)にパリ音楽院ピアノ科で1位(所謂プルミエ・プリと推測※)。1828年(17歳)和声学とピアノ伴奏でも1位。「和声学」のアシスタント、1837年にはソルフェージュの教授、1843年 和声学と伴奏法に於いてドゥルラン(Dourlen)の後継者となりました。1854-1886年 ピアノを教え、諸楽器の為の膨大な教材を作曲した人です。
 彼も又「チェルニーOp.299の準備のため」というタイトルで練習曲集を書いています。こちらはまさに、チェルニー40番練習曲集の音型を易しく反復したものや、30番練習曲に似たものも多いです。

※パリに於ける「1位」は、大勢の中の1番ではなく、合格者は全員「プルミエ・プリ」です。逆に言えば、「プルミエ・プリ」を取らなければ卒業を認められなかった、ということになります。

_____________________

これで、発表会の話は一旦終わらせます。
本来なら、主役である生徒たちの話を書きたいところですが、これは又折に触れて例として挙げさせて頂きます。

私のチェルニー30番練習曲全曲は、そのうち音源を何らかの形でアップ・・・
30曲とは言え、リピート無しですから通奏だけなら20分強。
10曲ずつ区切ってひと言を添えました。さもないと「今、何番あたりなのだろう?」となってしまいます。

関連記事

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://allegrobunchan.blog18.fc2.com/tb.php/630-2a072e6c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

片付けも放棄 «  | BLOG TOP |  » ぶっつけ本番の反省とお詫び

プロフィール

奥 千絵子

Author:奥 千絵子
★上の画像は2001年にCDにして約3枚分を収録したものを,2006年に2枚組としてリリースしたCD「樂の音に寄せて」です.『レコード芸術』2007年1月号で「特選盤」として取り上げられました.戸倉新樹教授によるライナーノートは医学生にもお薦めです.その他のCDや著書はWebsite「本館」からお入りください.このブログも「本館」のDIARYです.
★このブログの"Grüß Gott !" (文字化けの場合はGruess Gott!)は墺・南独の時間を問わない挨拶です.Website「本館」のDIARYです.出版CDや著書の詳細は「本館」のメニューからお入りください.
Website「別館」もあります. 著書「ピアノと向きあう」の説明を補うサイトです.よく頂く質問に説明を記載しています.
★上記著書については今井顕 氏によるKINOKUNIYA書評空間WEBLOG を是非ご一読くださいませ.
Auch auf Deutsch schrieb ich…
★【膠原病の記録】余りに医療のカテゴリーがが増えてしまったので目下整理中です.大変複雑な病気の経験が同じ病の方々への参考となりましたら幸いです.
「乳癌と膠原病(皮膚筋炎・多発性筋炎)」「膠原病(退院後)」 ,その他の医療の話(自分以外も含めて)は「医療・病院関係」,に取り敢えず分けました.
平成12.12.12.病院での復帰リサイタルは演奏動画入り記録です。
★恩師のことは55年間を遡り少しずつ記載するつもりです。目下のところはこれだけです.
★コメントも大歓迎です。SPAM防止上、確認後に公開しております。ご理解をお願い致します.
★このブログや大元のサイトへの感想やお問い合わせはservus2008@gmail.com宛に@を半角に直して送信願います.
【BGM】
Robert Stolzメドレー
演奏:東京カンマーコレーゲン 
室内楽アレンジ:奥 千絵子
ショパン:華麗なる大円舞曲Op.18
演奏:奥千絵子 ショパンのワルツは上の画像の2枚組CD「樂の音に寄せて」に入っております.
★Copyrights©1997-2020 Chieko Oku All rights reserved.
制作・著作:奥千絵子
★遙か下方に設置のカウンターは、サイトを複数回お訪ね下さいましても1日を1回とカウントし、又、私を入れない設定になっております。



最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する