時にはピアノの話を - 2011.08.17 Wed
午後からの生徒たちの集まりのため。
ここにアップするのもどうかと思うが、最初の下書きをそのまま。
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残暑御見舞い申し上げます。
手足を傷めたことについては、皆さまこっそり且つ堂々とブログをお読みのことと拝察致しております。レッスンでは私もお話ししている通り(言い訳ですね)。
自分のことを真っ先に書くことは躊躇われるものの、この経験は「教え方」を振り返る良い機会となり、これも神様の取り計らい、と思うほどです。
若いピアニストからの助言に、これからはネットの時代、本で補えきれない部分は是非YouTubeで配信を、とありました。
私としては本ですら、私の何十年にも及ぶ試行錯誤(時には大変苦しいものでした)をたったの2400円で安売りしている訳ですから、これ以上の安売りは…との反論を送ったのですが、DVDを作るとなればCD以上のチェックで心身共に疲労困憊を来す…「安売り」を逆に「責任は持たない」と捉えることも出来る訳で…といったやり取りが続き、なるほど…と納得しました。
ピアノの部屋の散乱を考え、まずは足元だけ録画すればよいペダリングを、と思っていた矢先の骨折。
それなら「指~腕の使い方」でも、と思っていたところの手の負傷。
これは、やはり「慌てるな」「熟考せよ」ということなのでしょう。
又、何でも最初は弾いて示す必要性については本に書いた通り、まずは真似から入って頂くことは必須です。けれども、いつまでも真似に頼って頂く教え方は如何なものか、徐々に「自ら考える」方向に移行していく重要性を感じております。
(これらはブログに更に詳しく書こうと思いつつ、思考力が停止しております)

* 練習に加えるべき、「音を出す行為」以前の思考
「ピアノと向きあう」に細かく書きました。弾く以前に「構成や表現を考えることと感じること」。
・ そのためにタッチの選択が必要となりますから、種類豊富なタッチは身体に常備しておかねばなりません。
・ 表現のためには和声進行のアナリーゼも必須で、ワンフレーズの中の「緊張」と「解決」を考える、輪郭や起伏、響きの厚みを付ける裏付けとして欠かせません。音程を即座に捉えられることは当然です。
本には生憎「索引」が無くて不便かと思いますが、目一杯ページ数を削減してのこと。私自身、かつて何度も読んだ手引き書では、どこに何が書いてあるか記憶するほどでした。その様に繰り返しお読み頂きたく願いますし、「これ」と思う箇所は付箋をお貼り頂き、索引代わりの単語をお書きください。
和声のアナリーゼに関し、どこかに「和声記号を書くことを否定している訳ではありません」と注釈した記憶があります。
大切なことは、「まずは和声記号を書いてみること」です。ただ、ここが終着点ではなく、寧ろスタート地点。そのアナリーゼによって表現の裏付けと言いますか、「だから、この様に弾きたい」となって頂きたいです。
音大や音楽教室では「和声学」は教えても、作品表現へ結び付けるところまでは教えませんね?
再三になりますが、簡単な和声やアナリーゼは、島岡譲先生の「和声と楽式のアナリーゼ」を最低限、把握なさってください。

* オーケストレーションの楽しみ
「ピアノと向きあう」第158頁から「7.オーケストラの楽器の音」でサンプルを挙げました。又第186頁から「アーティキュレーション」のことでスコアを載せました。
好みのオーケストラ作品を聴きながらスコアを広げ、具体的な音色に慣れ親しむことも必要です。その上で、練習中のピアノ曲に於ける「簡単なオーケストレーション(スコアに書かずとも)」を試みることは、音色や表情を考える補助になる筈です。

本日のメニュー
1.タッチの基礎として《ル・クーペ ピアノのABC》
(【 】の中のアルファベットは、著書の「タッチの種類」の分類で、「ピアノのABC」のアルファベットではありません)
* 【A】と【B】のため:第15番。第3&4指の他、第4&5指でもトリラーをさらってください(メトロノームの数字は無視して、最終的には出来るだけ速く)。
* 【C】と【D】のため:Gと第7番、第16番右手。
* 【E】:L
* 【F】:Oと第14番(ゆっくり練習してから、徐々に出来るだけ速く)
* その他のスタッカートは今回割愛し、ひとつの重さで音群を弾く(アルベルティバッソの応用も含む):Fと第6番、第7番の左手(バスで重さをかけて、その間に他の音を弾く)、第14番の左手、第16番の左手、第17番の左手。
Félix Le Couppeyについて
生誕200年を迎える、Félix Le Couppeyの表記、「ル・クーペ」が果たして正しいものか。人名の場合は難しいものの、「ル・クッペィ」が近いのではないか…色々な表記法はあると思うものの「クー」と伸ばすのは「?」です(全音楽譜出版社からのものはどれも「ル・クーペ」と表記されている)。フランス語に堪能な方はどうかご指摘ください。
簡単なプロフィール(ドイツ語の文章から抜粋);
17歳の時、既に「和声学」(!)のアシスタントとなる。1825年 パリ音楽院ピアノ科で1位(所謂プルミエ・プリと推測※)。1828年 和声学とピアノ伴奏でも1位。1837年 ソルフェージュの教授となる。1843年 和声学と伴奏法に於いてドゥルラン(Dourlen)の後継者となる。1854-1886年 ピアノを教え、諸楽器の為の膨大な教材を作曲。
*日本では安川加壽子先生がフランスから持ち帰られた有名な教材ですが(メトードローズも)、本に於いてもインターネットに於いても、余りに文献が少なすぎます。全巻揃っているグローブにすら載っていません(アルファベットでも、Fから、Lから、Cから、と調べたのですが…)。
※パリに関しての「1等賞」は、大勢の中の1番ではなく、合格者は全員「プルミエ・プリ」です。
2.《一発勝負の練習》
チェルニー、リスト、ショパン 等
今年はフランツ・リストの生誕200年であることから、発表会の最後は彼の作品を弾いて頂くことを計画しました。
練習中の作品が、74歳で亡くなるまでのリストの人生に於いて、どの様な時期に作曲されたのか、各自お調べ下さい。
☆よく訊かれる質問のひとつ、リストの「S」番号は、フランツ・リストの最も正統的な作品表を作成したイギリスの音楽学者、ハンフリー・サール(Humphrey Searle)の頭文字によります。彼は、ウェーベルン(Anton von Webern)門下の作曲家でもあります。
◎ 発表会に向けて
いよいよお約束の8月も後半となり、プログラムを決めたいと思います。既に決定の方も含め、ダブることのないよう、ご協力ください。
私自身も早く「一発勝負」に参加したい、と思いながら、リストのオクターヴや第1指でのffやsfzなどは手を悪化させるため、次回までに手を何とか整えます。
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上記、Le Couppeyの発音に関して、「ル・クッペィ」「ル・クペ」「ル・クッペ」のいずれかに表記をしたく、フランスと日本を行き来している指揮者に質問したところ、人名なので、その家系の人間しか正解は分からないものの、「ル・クッペィ」が妥当であろう、とのご意見を頂きました。しかもその後、仏文の教授の方にまでお訊きくださったとの由。
有難く、今後は「ル・クッペィ」と表記していくことに致します。
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