鍵盤楽器の変遷・種類 - 2009.09.24 Thu
鍵盤楽器として、オルガン、クラヴィコード、チェンバロ(ハープシコード)、ピアノ、の4種類を挙げてみます。
オルガンは、時代的にずば抜けて古くからある楽器です。
紀元前500年頃、水圧式オルガン、とでも言うのでしょうか、「ヒドラウリス(hydraulis)」と呼ばれるオルガンがありました。楽器の中央には水の入った水圧調整機があり、側面には2つのポンプがあり、演奏者はそのポンプを足で押し、長さは違う19本の管を水が通ることでを演奏した様です。
初期キリスト教時代になり、水ではなく、空気を「ふいご」で送る様になりました。
この「ふいご」がどの様に変遷したのかが、オルガンの歴史は関係があります。
床に大きな2つのふいごが置かれ、それを男性二人が上で跳ねて空気を送った画像が残っています。
紀元980年頃、イングランドのウィンチェスターに造られたオルガンでは、400の管と26のふいごがあり、いっぱいに風をはらんだ風凾が400の管を響かせる為、70人の男性が汗だくになってふいごを漕いだそうです。
この辺りから中世を経ても、まだオルガンにストップ(音栓)という調整装置が無く、これが出来て、それぞれ特性のある管をセットにして音色調整が出来る様になって行きます。
ライプツィヒのGrassi 楽器博物館にあった、古いオルガンを載せます。
Orgelpositiv (中世のポジティフオルガン)
写真では「ふいご」が一つ上がっていますが、二つ付いています。
現代のオルガンからは想像も付かない、原始的なものです。



チェンバロに進みましょう。
16~18世紀に栄えた鍵盤楽器です。
変遷に従って種類も沢山ありますが、共通するアクションは、ジャック(jack)という細長い木と、その上の方に付いた小さな爪(プレクトラム・plectrum)です。爪は鳥の羽の芯や革で出来ています。
鍵盤を下げると、その延長上(つまり鍵盤の奥の方。普通は見えません)に乗っているジャックが上がり、爪が弦を引っ掻き、音が鳴る訳です。
チェンバロの一種にスピネットというものがあり、これは一つの鍵盤に一つの弦です。
下は、1571年ベネツィアでB. フロリアーニにより作られたスピネットです。

次のものは、1693年フローレンツでB. クリストフォリにより作られたスピネットです。

チェンバロは鋭い絢爛たる音を出しますが、ピアノの様にタッチで強弱をコントロールすることが出来ません。
ですから、弦を何種類か張り、普通のピッチが8フィート、1オクターブ上を4フィート、1オクターブ下を16フィート、と弦を張り、オルガンの様にストップ(若しくは足のペダル*)により弦を組み合わせたり単独で使ったりして強弱に代わる方法を取っています。
二段鍵盤を持つチェンバロでは、一段単独で使ったり、二段を連動させる連結ストップも使えます。(*よく訊かれるので念押しの添え書きです:チェンバロの足のペダルは音を伸ばす為のものではありません。)
とは言え、現代のピアノの様な強弱は出ませんし、音色も全く違う、別な楽器です。
ストップ操作による音量変化の錯覚(という言葉は相応しくないかも分かりませんが)以外では、微妙な強弱やニュアンスが付けられる訳ではないので、強調したい音に前打音や装飾音の類を付ける訳です。又、ピアノでは強弱により付けることの出来るアーティキュレーションも、音を切る、繋げる、ということで表現します。
下は美しい絵が描かれた大型のチェンバロです。


下のものは…説明をよく読んで来なかったので忘れてしまいました。
(どなたかお教え下さいませ)

さて、クラヴィコードに行きましょう。
やはり16世紀頃から使われましたが、ピアノが出現する19世紀には衰退して行きました。
チェンバロとの大きな違いは、弦を叩くことです。
鍵盤の奥にT字型の金属棒(タンジェント・tangent)が付いており、鍵盤を下げるとタンジェントが押し上げられて弦を打つ、至って単純な構造です。
しかし、演奏は難しく、少し強く叩けばピッチの高い音が出、弱過ぎれば音は出ません。
又、小さな部屋には良いのですが、広い部屋には響きません。
但し、熟練すればヴィヴラートもかけられるそうですから、弾ける様になってみたいものです。
下はピンぼけながらクラヴィコードです。

少し遠いですね。

いよいよピアノが出現します。
と言っても突然発明された訳ではなく、多くの人たちがハンマーアクションを考えていた訳です。
著名な人は何と言っても、(上のスピネットで名前を挙げた)B. クリストフォリです。
大切な写真が見つからず、ネットから頂戴致します



突然現代のピアノのメカニックになった訳ではなく、まだまだ長い道のりです。
音も、チェンバロと現代のピアノの中間の様なイメージです。
鍵盤楽器の音の出るしくみがありました。
触って動きを試せるものでした。写真で残念です。
それぞれ一段ずつも更に創意工夫が重ねられ、何種類ずつも存在します。
(念の為、下の方が古い時代です)

ライプツィヒと言えば、Blüthner!!(私も以前使っていたのですが、共鳴弦が張ってあることが逆に自宅では響きすぎ、手放しました。)

甚だ端折りました。
又編集すると思いますが、取り敢えず(いつもの台詞となりました)送信致します。
作曲家との関連は、編集する迄は、前の日記の年表も参考になさってくださいませ。
Grassi博物館(正しくは、ライプツィヒ大学の音楽楽器博物館)の写真は、一通りアップしました。説明は又これも後日・・・
http://allegrobunchan.blog18.fc2.com/blog-entry-345.html
(これらも、レジュメを兼ねます)
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