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2020-09

細部の重要性 - 2009.09.18 Fri


支障がある、と思って時間を決めて非公開にした昨日の日記を又オープンにする矛盾ですが・・・
今回の事で改めて考えさせられたのが「細部の重要性」と、その為に自分で試行錯誤をする手間を惜しまないことです。


私の実父(奥龍之介)の話を例に挙げたいと思います。
昨日書いた通り、父に絵の手ほどきを受けておけばよかった・・・と後悔する私ですが、父に「教えて」と言えば、「絵は習うものではない」が口癖でした。ですから弟子も取りませんでした。
とは言っても、何か描いて見せたなら、おそらくヒント程度のアドヴァイスはくれた事でしょう。残念でなりません。


そういう父ですから、藝大(当時の東京美術学校)入学の頃には伊原宇三郎先生に教えを受けたのでしょうが、第二次世界大戦の真っ直中からその後の混乱期は大学どころでなく、後は自分で模索し、絵の具代を稼ぐ為にも他の仕事をしつつ、自分で試行錯誤をしながら描き続けていた様です。

身贔屓ながら、下に実父の大作を載せます(著作権は遺族にあるそうですから遠慮は不要で…。但し、お使いになる場合はご一報下さい)。

全体です。

「異郷」(100号) 奥龍之介
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この絵の中の細部を載せてみましょう。
全体の中ではほんの小さな部分、これを額縁に入れてもひとつの作品となりませんか?
(それ以前に、どこに在るか探してみましょう)

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又、別な絵でも同様です。

「枯れゆくとうきび」(120号) 奥龍之介
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(以下、部分は携帯カメラです)
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どうしてこの様な画像を挙げたかと言えば、演奏でも全く同じことが言えるからです。

かつての大ピアニストであり、作曲家でもあった、ブゾーニ(Ferruccio Busoni)の文章から抜粋・引用致します(東京創元社 訳:原田光子);

「わたしは数年前にすばらしい色彩のステンド硝子の製作家として謳われていた、ある有名な芸術家に逢ったことがあった。この人は同時代の人びとからステンド硝子の製作者としては世界の第一人者と認められていて、彼の名は全欧州の芸術家仲間に喧伝されていたが、この人がわたしに語ったきわめて簡単な言葉ほどに、芸術品の細部の重要性について暗示に富む言葉を他に今ちょっと考えられない。
彼は言う。
『芸術的に真の傑作品といわれているステンドグラスが、もし過ってこなごなに破壊されたとしても、残された唯一の小さな破片をよく検討することによって、ありし日のその窓全体の偉大さを充分に評価することが可能である』
(中略)
大ピアニストの演奏とかけだしの若手のピアニストの演奏を区別するものが、細部の完璧性のいかんによる場合がしばしばある。新進のピアニストは多くの場合、いわゆる曲の中心点はうまく掴んでまとめるが、真にすぐれた芸術家のインタープリテーションに、つねにほとんど決定的な性格を与える、細かい部分の表現に、細かい心遣いを働かす人はきわめて少ない。(後略)」



細部の重要性は、私自身も大学を出る迄は師匠から習ったことはなく、試行錯誤の連続でした。
この抜粋された文章の書かれた大元の本、「大ピアニストは語る」に約250ページにわたって述べられている20人の巨匠達の文章を頼りに、日々細部のイメージを作り、演奏及び練習方法を工夫したものです。
絶版になっているのが残念です。

細部を表現するには技術、音色の種類の多さを作り出す指・手・腕の使い方により編み出されるタッチ、これらを研かねばなりません。

ピアノの部屋や階段に掛かっている父の上の大きな絵は、私にとって刺激となります。
63歳で他界したのは本当に残念なことで、長生きをして、もっと沢山の大作も描いて欲しかった、と改めて思う日々です。


(レジュメを兼ねます。プリンタを何とかしませんと・・・)
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● COMMENT ●

MEMEさん

こんばんは。
いつも有難うございます。そして書き込みを有難うございました。

父が亡くなり、既に23年以上が過ぎました。
余りに早過ぎ、これから再び大作にも挑みたい、という意欲を示していた時でした。
ヴァイオリンシリーズを依頼される様になり、一晩に何枚も同時進行する年月が過ぎ…。ヴァイオリンを抱く少女を柔らかく包む様なタッチで書いていましたが、時間との戦いに、いつの間にか末期癌となっていたのです。結局大きなキャンバスには向かえず終い・・・

ふとそんな事も思い出して、細部の例に父の絵を使ってしまいました。

MEMEさんのサイトも時々拝見させて頂いておりますが、絵もドレスも本当に素晴らしくて…多才でいらっしゃるのですね。
私もこれから色々なことに時間を広げたい、と刺激を受けております。

今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

奥龍之介氏の絵

こんばんは。  MEMEです。
いつもこちらのblogを拝見して感動しています。
特に今日の「奥龍之介」(お父上)の絵を拝見し、書き込みをさせて頂いています。
ここに掲載されている二枚の絵の素晴らしさはもとより、人物画「ヴァイオリンをひく少女」シリーズにとても興味を持って拝見させて頂きました。
ここの二枚と同じ作者の絵とはとても思えない筆使いなので、その点だけでも驚きました。
もしや、この少女の「モデル」さんは、お嬢様である奥千絵子さんかしら・・と思いながら拝見しました。
64歳で筆を折ることになったとは、本当に残念です。
「枯れゆくとうきび」の細部の描写には、目を見張るものがあります。
ほんの少しだけ絵を齧っている私にとっては、素晴らしい教科書になります。
本当に素晴らしい絵を、しかも、細部の描写を見せてくださり、感謝いたします!
ありがとうございました!


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プロフィール

奥 千絵子

Author:奥 千絵子
★上の画像は2001年にCDにして約3枚分を収録したものを,2006年に2枚組としてリリースしたCD「樂の音に寄せて」です.『レコード芸術』2007年1月号で「特選盤」として取り上げられました.戸倉新樹教授によるライナーノートは医学生にもお薦めです.その他のCDや著書はWebsite「本館」からお入りください.このブログも「本館」のDIARYです.
★このブログの"Grüß Gott !" (文字化けの場合はGruess Gott!)は墺・南独の時間を問わない挨拶です.Website「本館」のDIARYです.出版CDや著書の詳細は「本館」のメニューからお入りください.
Website「別館」もあります. 著書「ピアノと向きあう」の説明を補うサイトです.よく頂く質問に説明を記載しています.
★上記著書については今井顕 氏によるKINOKUNIYA書評空間WEBLOG を是非ご一読くださいませ.
Auch auf Deutsch schrieb ich…
★【膠原病の記録】余りに医療のカテゴリーがが増えてしまったので目下整理中です.大変複雑な病気の経験が同じ病の方々への参考となりましたら幸いです.
「乳癌と膠原病(皮膚筋炎・多発性筋炎)」「膠原病(退院後)」 ,その他の医療の話(自分以外も含めて)は「医療・病院関係」,に取り敢えず分けました.
平成12.12.12.病院での復帰リサイタルは演奏動画入り記録です。
★恩師のことは55年間を遡り少しずつ記載するつもりです。目下のところはこれだけです.
★コメントも大歓迎です。SPAM防止上、確認後に公開しております。ご理解をお願い致します.
★このブログや大元のサイトへの感想やお問い合わせはservus2008@gmail.com宛に@を半角に直して送信願います.
【BGM】
Robert Stolzメドレー
演奏:東京カンマーコレーゲン 
室内楽アレンジ:奥 千絵子
ショパン:華麗なる大円舞曲Op.18
演奏:奥千絵子 ショパンのワルツは上の画像の2枚組CD「樂の音に寄せて」に入っております.
★Copyrights©1997-2020 Chieko Oku All rights reserved.
制作・著作:奥千絵子
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