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2020-09

懐かしい曲との再会(「あめにはさかえ」の原曲) - 2009.08.16 Sun

今年はハイドンの没後200年でもありますが、メンデルスゾーンの生誕200年でもあります。

ピアノ曲でメンデルスゾーンと言えば「無言歌集」「厳格なる変奏曲」が筆頭に挙げられ、もう少し範囲を広げれば、「幻想曲」「6つの前奏曲とフーガ」「練習曲集」・・・いや、数えられなくなるので止めましょう。
ヴァイオリンでは、あのe-mollの甘く切ない冒頭のコンチェルト。

それとは別に中高時代、随分沢山のメンデルスゾーンによる聖歌や讃美歌を歌った記憶が蘇ります。
讃美歌では、有名なところで*「昔ながらの」讃美歌第2番、第30番、第98番「あめにはさかえ」(英語でもよく歌われる"Hark! the herald angel sing" チャールズ・ウェスレイによる詩)、第174番、第190番、第314番、第406番・・・まだあると思いますが・・・第2編にも沢山ある様ですが、生憎私は馴染みが無いのです。
又、讃美歌267番「神はわがやぐら」の原曲はマルティン・ルターの「Ein' feste Burg」ですが、メンデルスゾーンは交響曲第5番の終楽章に、この曲をテーマに使ってモチーフを自由に発展させています。
(*讃美歌は、昔からの讃美歌に「第2編」が加わり、更に「讃美歌21」というものもあります。更に、宗派によっては聖歌集の様なものを使っている場合もあります。)

聖歌では「山を見上げよ」「主を頼みて」他(オラトリオからの抜粋を沢山歌いました)、数々。
讃美歌第30番は、ピアノをやっていれば余りに馴染みのある、無言歌集Op.30/3が原曲。

日頃、余り丁寧に聴かないオラトリオなどにも今年は耳を傾け、上記174番は「パウロ」(「Paulus」Op.36) の序曲やコラール「Wachet auf! Ruft uns die Stimme」(目覚めよ、との呼ぶ声あり、と訳すのだったか…?)。
同じく「パウロ」の中の合唱、「Wie lieblich sind die Boten」や、「讃歌(Lobgesang)」の第5曲「主を頼みて(Ich Harrete Des Herrn)」も、日本語の歌詞は飛び飛びにしか思い出さないのですが、よく歌ったことは確かです。
「山を見上げよ」は「エリヤ」(Elias Op.70 )第28曲 三重唱(ア・カペラ)「Hebe deine Augen auf」。
これを中学の音楽の授業で習った時には、私たちはすっかり気に入ってしまい、校庭や渡り廊下を歩く時にも合唱しながら歩いたものでした(あぁ、懐かしいなぁ!)
讃美歌190番も「エリヤ」Op.70 第15曲目「Wirf dein anliegen auf den Herrn」。



さて、これらの中の讃美歌98番「あめにはさかえ(Hark! the herald angel sing)」なのですが、確か中学1年か2年の時、講堂のステージの上で合唱をした記憶があるのです。しかも、もっと長くて「組曲」の様な構成だった記憶が…。
原曲はそのままだったのだろうか?それとも何か他の合唱曲の中に入っていたのだろうか?
年齢から言って、当然日本語で歌い、しかもクリスマス関係の歌詞だったと思います。
この98番も、上記の通り、チャールズ・ウェスレイによる歌詞ですから、当然英語でしょう。しかし、メンデルスゾーンはドイツ人ですから、ドイツ語の何かもっと長い歌詞だったに違いありません。
気になると気になる!!懐かしさも相俟って、何とか手に入れたい!!
今年の3月頃、讃美歌98番の右上に記されている「Festgesang(1846)」を頼りに探すことを思い付きました。

3月末だか4月初めだったか、キリスト教のコーナーに聖歌、讃美歌、奏楽用の曲集などが沢山置かれている教文館に出向いて尋ねたのですが、歌ったのが昭和38年前後である事を説明すると、「そんな古いものは置いていない」と一笑に付され…「和訳の曲であれば木岡英三郎のものに違いないが、そういう古いものはとっくにありません」とも…。

色々ネット検索をしたり、本(讃美歌については権威ある本)を調べたりしたところ、「原曲」といった風に記されている「Festgesang(祝典歌)」 Op.68というものが見つかり、大喜びで楽譜を海外から取り寄せてみました。ところが、4月初めに届いたものは全く旋律が違う!「あめにはさかえ」の片鱗すらない!!しかも「Festgesang an die Künstler」と要らぬ単語が加わっているではありませんか。


とうとう、ドイツに住んでおられる藝大の後輩にあたる友人、優秀なピアニストであられる佐藤卓史さんにメールで問い合わせてしまいました。
ドイツ在住なら見つかるかも分からない、という気安さでした。
しかし、矢張りなかなか見つからずに、ハノーファーの市立図書館その他、演奏活動の合間、ドイツでも日本でも気に留めて調べ続けて下さり、何度もメールのやり取りをさせて頂き、とうとう探し出して下さったのです!!ご多忙の中、頭が上がりません。

佐藤卓史さんからのメールの内容は;
多くの資料の説明を読んで下さり、そこから判明したことは、メンデルスゾーンの書いた「Festgesang」というタイトルの曲は2つあり、どうやらこの2つが混同されてしまっているが、正しくは讃美歌98番のの原曲になったのはOp.68(An die Künstler)とは違う、もうひとつの方の「Festgesang」ではないか、ということ。又、讃美歌98番「Hark! The Herald Angels Sing」の多くの資料の説明にはたいていOp.68が原曲であると書かれているが、これには二重の間違いが含まれている、ということ。つまり「An die Künstler」の付いたOp.68の作曲年は1840年ではなく1846年であり、1840年に書かれた方のFestgesangが本来讃美歌98番の原曲であること。そしてこの讃美歌98番の原曲には作品番号が無く「グーテンベルク祭のための祝典歌(Festgesang zur Gutenberg-Feier)」というサブタイトルが付いていること。
つまりは多くのネット上の記事でも、そのふたつの曲と内容が混ざってしまっているのだそうです。
幸いなことに、佐藤さんがどれかの記事に於いて、「1840年」という年号を見つけて下さった事から、更に「Festgesang zur Gutenbergfeier(グーテンベルク祭のための祝典歌)」の存在の確認にまで、調べを進めて下さったのです。

その後も更に調べ続けて下さり、何か進展があるとメールを下さいました。
こちらも讃美歌のみならず、記憶にある「短調」になった部分を手書きで添えて(この部分は歌詞まで覚えており…「淋しき闇路 辿る同胞(はらから)よ 寒き夜空に 星影さえなく 闇をやぶりて 光差し出で」で長調に戻ったと思うのです)・・
こうなると、「図々しいオバサン」の他何ものでもありません。

そして5月、遂に「楽譜を発見しました」とのメールが!!!;
「ハノーファーの市立図書館にOp.68のピアノ伴奏譜が2冊あったので、一応2つとも借りてみたところ、そのうちの1冊(Peters)にOp.68の他に"Festgesang zur Säcularfeier der Buchdruckerkunst"が含まれていたのです。
このFestgesangは4曲からなり、つまり I. Choral、II. Lied、III. (無題)、IV. Choral、これの「II. Lied」が讃美歌98番の原曲のようです。」

・・・と、楽譜の発見にまで辿り着いて下さったのです。

まさにこれです、これです!!

更に、その「Lied」の楽譜を添付下さり・・・短調の部分も記憶の通り存在していました。
又、ヘンデルのメサイアのハレルヤコーラス、"King of Ki- - - ngs,  and Lord of Lo- - - rds," という歌詞の部分と似た箇所があった気がしていたのですが、その部分もあるではないですか!
曲との再会に大感激してしまったのでした。
最初に頂いた添付はその98番の原曲である第2曲だけでしたが、最上段に第1曲目の最後の一段も入っており、その譜面を見ていたところ、第2曲へ移る前の間の取り方すら記憶が繋がり、第1曲の冒頭旋律まで蘇りました。左手に確か延々オクターブの伴奏があった事までも!

これ以上のお願いは…と躊躇いつつも、ここ迄の図々しさついでに、全4曲をお送り頂くことをお願いしてしまいました。
貴重な時間を使って頂き申し訳ない限りでしたが、やっと謎が解けました。
表紙を見て、これは紛らわしい・・・2つ並んだうちの下のものは、あたかもサブタイトルの様に見えてしまいます。
誤解を招いた原因のひとつだったのではないでしょうか。


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讃美歌の楽譜には、更に「ウィリアム・ハイマン・カミングズによる編曲」と書かれていますが、ウェスレイによる「Hark! the herald angel sing」の歌詞に当初付いていた曲がいまひとつであった為、カミングズが讃美歌として編曲して、この歌詞を当て嵌めた様です。

正しい原曲の楽譜からは、なるほど…全然歌詞の内容が違います。「あめにはさかえ」の冒頭は「Vaterland(祖国)」で始まり、「Deutschland(ドイツ)」の単語も・・・
そして、そのハレルヤコーラスの伸ばしに似ているという箇所、つまり讃美歌では「みつかいたちの たたうるうたを」の部分ですが、原語では、1度目は「Gutenberg, der deutsche Mann (グーテンベルク、ドイツの人よ)」、2度目は「Gutenberg, der große Mann(グーテンベルク、偉大な人よ)。その後短調になり、再現部では「Gutenberg, du wackrer Mann(グーテンベルク、果敢な人よ)」・・・という具合に、グーテンベルクを褒め称えています。(日本語の歌詞では、「やーーみをーーー、やぶーーりてーーー」だったと思います。)


すっかり興奮してしまい、懐かしさも相俟って、そしてメンデルスゾーンに元の歌詞が繋がり、これはいずれ、大元の歌詞で歌ってみたいものだ・・・とすら思ってしまいました。
(見つかる前は、まさかグーテンベルクの内容とは考えてもみなかったので、探し出して、キリスト教関係の場で歌う機会を作ってみたいものだ、とずっと考えていたのですけれども…。)

でも、ドイツ人を讃え、グーテンベルクを讃えても・・・勿論、印刷技術の発明によって、聖書の印刷も可能になり、ひいては楽譜の印刷にも繋がった訳ですが・・・

今年はまず、生誕200年のメンデルスゾーンを讃えて、原曲の音だけを二台ピアノで弾いてみましょうか・・・
オーケストラスコアが無いので、どの程度のボリュームなのか、弦だけなのか、管も加わるのか、或いは管が活躍するのか…等々、興味深いところでもあります。
ともあれ一台ではボリュームが出ませんから、二台で実演の機会を作りたいと思います。



何はともあれ、佐藤さん、本当に有難うございました。
心からお礼を申し上げます!!






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プロフィール

奥 千絵子

Author:奥 千絵子
★上の画像は2001年にCDにして約3枚分を収録したものを,2006年に2枚組としてリリースしたCD「樂の音に寄せて」です.『レコード芸術』2007年1月号で「特選盤」として取り上げられました.戸倉新樹教授によるライナーノートは医学生にもお薦めです.その他のCDや著書はWebsite「本館」からお入りください.このブログも「本館」のDIARYです.
★このブログの"Grüß Gott !" (文字化けの場合はGruess Gott!)は墺・南独の時間を問わない挨拶です.Website「本館」のDIARYです.出版CDや著書の詳細は「本館」のメニューからお入りください.
Website「別館」もあります. 著書「ピアノと向きあう」の説明を補うサイトです.よく頂く質問に説明を記載しています.
★上記著書については今井顕 氏によるKINOKUNIYA書評空間WEBLOG を是非ご一読くださいませ.
Auch auf Deutsch schrieb ich…
★【膠原病の記録】余りに医療のカテゴリーがが増えてしまったので目下整理中です.大変複雑な病気の経験が同じ病の方々への参考となりましたら幸いです.
「乳癌と膠原病(皮膚筋炎・多発性筋炎)」「膠原病(退院後)」 ,その他の医療の話(自分以外も含めて)は「医療・病院関係」,に取り敢えず分けました.
平成12.12.12.病院での復帰リサイタルは演奏動画入り記録です。
★恩師のことは55年間を遡り少しずつ記載するつもりです。目下のところはこれだけです.
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【BGM】
Robert Stolzメドレー
演奏:東京カンマーコレーゲン 
室内楽アレンジ:奥 千絵子
ショパン:華麗なる大円舞曲Op.18
演奏:奥千絵子 ショパンのワルツは上の画像の2枚組CD「樂の音に寄せて」に入っております.
★Copyrights©1997-2020 Chieko Oku All rights reserved.
制作・著作:奥千絵子
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