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2020-09

バイエル賛否両論 - 2009.05.30 Sat

先日5月23日の朝日新聞の「文化特捜隊」に、「ピアノ入門バイエル離れ」というタイトルにて文章が書かれていた。「新たな教材が続々 ■ 苦行だが達成感も」とのサブタイトル。

又か…と思う。
どんな教材も使い方次第、つまり教え方次第では有害にもなり得るし、大きな進歩の手段ともなり得る。


ピアノを使っての表現力のみならず、西洋音楽の骨組みとも言える和声法を自然に身に付けることも出来るバイエル。つまり「トニカ」「ドミナント」「サブドミナント」の役割やハーモニーの変化、更に和声進行の禁止事項なども、バイエルを弾いているうちに自然と耳と手から入ることが出来る。
伴奏形なども、モーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン等古典派に直結しており、貴重な教材だ。

ただ、使い方次第である。これは又詳しく書く機会があるので短く留めるが、バイエルを弾く以前に欠かしてはならないことがいくつかある。
まず手指の形を整えることは必須だ。腕の重さをかけて指関節がふらつく様では、限界が来て先に進めなくなる。つまり楽譜に目が集中している間、手指の形は見えていない訳だから、この基礎はバレエのバーレッスンの如く、バイエルを始める前に習慣付けるべきだし、更に教材が進んでも、常に同時進行すべきだ。
それとバイエルの最初のフィンガリングで、ドレミファソが右手なら即ち12345と直結しがちなので、ランダムに音と指番号を書いて、鍵盤をその指で弾かせることなども必要だろう。
又、最近ではテレビからであれ街の中であれ、様々な種類の響きを耳にしているので、子供であっても、いや子供こそ音感が付き易い。そういう時期に古典派の基礎だけでは勿体ない。教師は進んで、上巻のうちから♭、♯など臨時記号を教えてよいし、教えるべきだ。上巻だけで1年もかけていては退屈になってしまう。その子供に応じて補助的な譜面を書いて与えることを惜しんではならないと思う。
今では楽譜店に行けば、沢山の曲集を売っているが、あれこれ買って沢山の曲を楽しむのであれば構わないが、一冊のうち一体何曲弾くだろう?所謂「名曲」に辿り着くまでは教師が書いてやれば済むことだ。
並行してバイエルの不足を補って行けば、上巻そのものは子供であれば3-4ヶ月乃至半年で終わるであろう。
下巻になれば、メロディーと伴奏のバランス、バスの流れ、美しいメロディーの表情など、教師が弾いて示してやれば子供はいくらでも反応する。下巻も特に後半ともなれば、重力奏法(手や腕の重さで鍵盤を下げる)でそれらが可能になる筈だ。
そうすれば、遡ってバロック時代のポリフォニーの各旋律の表情ある弾き分けも可能になるし、古典派への最短距離ともなり、そして時代順に進んで行くことが可能となる。日本人の苦手とする3拍子も、バイエルにはワルツのリズムの左手が沢山出て来る。ここで左手だけ良い練習をして身体で感じられるまでになってしまえば、その先こんな楽しいことはない。

ひたすら同じ強さの音を並べて弾くことだけは、初歩と言えども避けるべきだ。その様に練習してしまうので弊害ばかりが問題となるのだと思う。
たとえバイエルの易しい旋律であっても、心と一体化させて弾くには、「これでよい」ということはない。


どんな教材でもこれで完璧、というものは無く、教師の試行錯誤が必要であるし、生徒側も上達を望むのであれば、幼いうちは毎週レッスンに通うことが望ましく、家での練習に於いてはマイナス方向に進むことのない様、親御さんの適度なフォローは必要だと思う。

これは30年間、初心者の指導は勿論、マイナス方向に進んでしまった方々の矯正を、年齢や立場に関わりなく携わってきた者としての呟きです。



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プロフィール

奥 千絵子

Author:奥 千絵子
★上の画像は2001年にCDにして約3枚分を収録したものを,2006年に2枚組としてリリースしたCD「樂の音に寄せて」です.『レコード芸術』2007年1月号で「特選盤」として取り上げられました.戸倉新樹教授によるライナーノートは医学生にもお薦めです.その他のCDや著書はWebsite「本館」からお入りください.このブログも「本館」のDIARYです.
★このブログの"Grüß Gott !" (文字化けの場合はGruess Gott!)は墺・南独の時間を問わない挨拶です.Website「本館」のDIARYです.出版CDや著書の詳細は「本館」のメニューからお入りください.
Website「別館」もあります. 著書「ピアノと向きあう」の説明を補うサイトです.よく頂く質問に説明を記載しています.
★上記著書については今井顕 氏によるKINOKUNIYA書評空間WEBLOG を是非ご一読くださいませ.
Auch auf Deutsch schrieb ich…
★【膠原病の記録】余りに医療のカテゴリーがが増えてしまったので目下整理中です.大変複雑な病気の経験が同じ病の方々への参考となりましたら幸いです.
「乳癌と膠原病(皮膚筋炎・多発性筋炎)」「膠原病(退院後)」 ,その他の医療の話(自分以外も含めて)は「医療・病院関係」,に取り敢えず分けました.
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演奏:東京カンマーコレーゲン 
室内楽アレンジ:奥 千絵子
ショパン:華麗なる大円舞曲Op.18
演奏:奥千絵子 ショパンのワルツは上の画像の2枚組CD「樂の音に寄せて」に入っております.
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制作・著作:奥千絵子
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