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2020-04

恩師・永井進先生のブルクミュラー - 2016.12.04 Sun

記載は12月29日。年明け前に記録しておこう…と。


小学校3年から大学を卒業するまで師事したことになる永井進先生。大学時代は先生のリサイタル、ショパンコンクールの審査に出掛けられたり、後半はご病気でレッスンは少なかったが、13年間師事していたことに変わりはない。

不服ばかり母に並べたてた。
「まるで5分診療だったわ」と思い続けていた。
勿論、私の手は小さすぎ、小3でも7度すら怪しく、身長は120cmだった。本当に小さな子に見えたと思うし、精神年齢も幼稚園並だったのでは?
永井先生から宿題に出るのは、そういう手でも弾けるスカルラッティ、ハイドン、モーツァルトのソナタばかり。しかも緩徐楽章は心が届かないから、と省略。練習曲も、同じ位の年齢のお弟子さんが来られるようになった小学校6年になり、「チェルニー30番を10曲ずつ持っていらっしゃい」、その後引き続き「40番を10曲ずつ」となり、しかも指の動かし方の指導があるわけでもない。その後はクラマー=ビューロー、クレメンティやケスラー(他は名前も出ないほど)など一連の「練習曲」と名の付く物は弾いた。でも本当に「弾いた」だけ。あるテンポで弾けて止まらなければあがる。
中学になっても高校になっても、止まらず弾ければ「うん、いいでしょう」でおしまい。バッハも然り。暗譜で止まらなければおしまい。だから平均律クラヴィア曲集第一巻は中1の4月頃から宿題に出て、1週間もあれば(いい加減な)暗譜は出来てしまうので、どんどん進んで中2終わりか中3初めには終わったのでは?(終わったと言える内容ではなかったと信じているが)アナリーゼなど考えたこともない(ということだけ記憶している)。

そんなこんなで、本気になった高校時代は勿論、大学に入ってからの私は本当に苦労した。生徒を教えるにあたり、平均律も自分で学習し直した。Dux, Comes, Kontrapunkt、及びフーガのその他の決まり事や応用を。

それで母に文句を言っていた訳だが・・・


話は本題に。
11月末に、Facebookを眺めていたら「明治44年生まれの永井進さんのレコード。これが『25の練習曲』の名盤中の名盤だと、ぶるぐ協会は熱愛しています。」と目に飛び込んで来た。
世間にも音楽界にも疎い私は、初めて「ぶるぐ協会」の存在を知ったし、まさか自分の恩師がブルクミュラーの「25の練習曲集」を収録されていること、あんなに長く師事していたというのに、全く知らなかった。
ナントイウデシダロウ・・・
続いて、「『教育的』『模範演奏』といった類いのレコードが多かった昭和、この人はなぜにここまで、アーティスティックに美しいブルクミュラーを残してくれたのか。 『きれいな流れ』など、信じられないテンポでまったく別の音楽像を聴かせてくれます。涙が出そうな『やさしい花』。小粋な『スティリアンヌ』、お洒落でミステリアスな『バラード』...今のどの演奏家の盤でも聴けない素晴らしい芸術性です。12/4かなっくホールの『懐かしのブルクミュラー展』でお待ちしています。」と書かれてあるではないか!!

サイト上でお尋ねしたところ、ほんの10分ほどではあるが鑑賞会があるとのこと。
これは何としても聴きたい!!!
場所は全く知らない東神奈川。・・いや、新幹線に乗ろうとも飛行機に乗ろうとも、10分の為であっても行きますとも!!

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という訳で、午前中は孫の教会に付き合い、自分の(普通の大人の)礼拝は省略し、向かうは東神奈川。
折良く、その前の催しにも間に合い、楽しむことが出来た。

そして、いよいよ永井先生のブルクミュラーのLPだ!!

ブルクミュラーの不思議から  8229846_2238639856_114large.jpg



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第1曲〜第7曲と、あとは第15曲の「バラード」を聴かせてくださった。
大変おこがましく、横柄、且つ…単語が出ないし、呆れられるだろうし、口にすべきではないのだが、第1曲が鳴り始めるや、私のCDの演奏にそっくり!!」と思ってしまった。
続く曲々、少しペダリングが多い(深く踏み過ぎ。あのご年齢の方々は「踏むか踏まないか」で、ハーフペダルや耳で深さを踏み分けたり、徐々に深くする、徐々に浅くすることなどお考えにならない世代なので仕方ない)と感じたが、全く違和感なく聴き続けた。
どうしてだろう・・直接ブルクミュラーなどお習いしたことはなかったのに。

それは当然と言えば当然だ。8歳から毎週末の半日〜1日を、永井進先生のレッスン室で門下の方々へのご指導を耳にして育ったのだから。
レッスンの時間は決まっておらず、着いた順。午後1時の開門を目指して皆さん永井先生のご自宅の前に向かう。
開門すれば、当時既にピアニストでいらした方々や、藝大・藝高の受験生の演奏と永井先生のコメントを子守歌のごとく耳に過ごした日曜の午後。我が家は6歳離れた妹が居たので、母にしてみれば家事と妹の最低限の世話をして、あとは父や祖母に妹を任せ、私に付き添っていた。だから開門前に着いても、私の前には既に多くのお弟子さんがいらした。そのことが良かったのだ、と今になって思う。私に対しても、ほんのひと言ふた言の注意であっても、それは技術ではなかった。音楽の、それもとても深い位置にあることだった。

ある程度の年齢 - 高校1〜2年 - になってからのレッスンの厳しさは今も思い出す。同じ1810年生まれの作曲家であっても、ショパンとシューマンでは全く違うこと。ショパンの大曲を感情の向くまま弾いていると、「恋愛感情じゃぁないんだぜ!!」続いて「亡国への憂い、華やかなりし頃の祖国への愛情だろう?」との言葉が飛んで来る。シューベルトの曲が地味で飽きて、(内心、きっと忘れられているに違いない、と別な宿題のベートーヴェンを持って行くと)「シューベルトはどうした!まだ満足に弾けていないだろう?」と、しっかり覚えられていてみっちり絞られた。シューベルトの弾き方を。後になれば、リートの歌詞のように表現すれば良いのだ、と思ったが、ドイツ語も何語も分からない当時。
さりとて具体的な指示は一切出ない。傍で腕組みをしてリクライニングチェアのような椅子にもたれて音を観察されている。
ショパンの第2番のソナタ、第2楽章のオクターブの連打の部分は心の表現を求められ、瘭疽になるまでレッスンで反復して弾かされた高校2年。内面の表現のために。その為の技術、つまりテクニックは自分で工夫するもの。それが私達生徒の中では当然となっていた。
安直な練習はすぐに見抜かれたが、ガツガツ練習したらしたで、「了見が狭いから、そんな演奏しか出来ないんだ!」と怒鳴られ、深い音楽性への試行錯誤を求められた。
作曲家によるリズムへの指摘も厳しかった。特に他楽器の伴奏に於いて支えとなるピアノが刻むリズム、同じヨーロッパの中でも地域色の求められる作品。伴奏者が主導権を持つべきことも同時に学んだ。(永井先生の奥様はヴァイオリニスト、現・東京音大の教授でいらした)

ブルクミュラーに戻る。「バラード」の1箇所、クレッシェンドして頂点になる箇所、何度目かの時に突然、頂点をピアノに落とされた。
そうだった・・・そうだったではないか!!ショパンで、クレッシェンドした頂点の音をふわりとやわらかく音量を落とすことでも頂点を作れる、つまり頂点は音量を増した頂上だけではなく、落とすことの驚きでも作れるのだ、と教わったこと。ショパンのコンチェルトでも、美しいメロディをふわり、と抜く頂点。
「即興性だよ、即興性!」と何度言われたことか・・・


あぁ、永井先生、もっとゆっくり私の方が心を開いてレッスンを受けたかったものです。
もっと沢山、大人としての話がしたかったです。

そして、永井先生のように「創意工夫」と「試行錯誤」を課題に与える教え方を、私も充分に取り入れねば、と反省した日となりました。


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プロフィール

奥 千絵子

Author:奥 千絵子
★上の画像は2001年にCDにして約3枚分を収録したものを,2006年に2枚組としてリリースしたCD「樂の音に寄せて」です.『レコード芸術』2007年1月号で「特選盤」として取り上げられました.戸倉新樹教授によるライナーノートは医学生にもお薦めです.その他のCDや著書はWebsite「本館」からお入りください.このブログも「本館」のDIARYです.
★このブログの"Grüß Gott !" (文字化けの場合はGruess Gott!)は墺・南独の時間を問わない挨拶です.Website「本館」のDIARYです.出版CDや著書の詳細は「本館」のメニューからお入りください.
Website「別館」もあります. 著書「ピアノと向きあう」の説明を補うサイトです.よく頂く質問に説明を記載しています.
★上記著書については今井顕 氏によるKINOKUNIYA書評空間WEBLOG を是非ご一読くださいませ.
Auch auf Deutsch schrieb ich…
★【膠原病の記録】余りに医療のカテゴリーがが増えてしまったので目下整理中です.大変複雑な病気の経験が同じ病の方々への参考となりましたら幸いです.
「乳癌と膠原病(皮膚筋炎・多発性筋炎)」「膠原病(退院後)」 ,その他の医療の話(自分以外も含めて)は「医療・病院関係」,に取り敢えず分けました.
平成12.12.12.病院での復帰リサイタルは演奏動画入り記録です。
★恩師のことは55年間を遡り少しずつ記載するつもりです。目下のところはこれだけです.
★コメントも大歓迎です。SPAM防止上、確認後に公開しております。ご理解をお願い致します.
★このブログや大元のサイトへの感想やお問い合わせはservus2008@gmail.com宛に@を半角に直して送信願います.
【BGM】
Robert Stolzメドレー
演奏:東京カンマーコレーゲン 
室内楽アレンジ:奥 千絵子
ショパン:華麗なる大円舞曲Op.18
演奏:奥千絵子 ショパンのワルツは上の画像の2枚組CD「樂の音に寄せて」に入っております.
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制作・著作:奥千絵子
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